正月過ぎたので餅詰まり事故の最新トレンドを調査しました
正月といえば餅。美味しいお餅ですが、毎年餅を詰まらせて搬送、場合によっては死亡する人がニュースになるので、公開されているデータを使って簡易的な調査・分析を行ってみました。調査の目的は、全体的な傾向を把握し、自分が当事者になる可能性を探ること、最後に予防策を知ること。調査対象は東京都をサンプルにしました。
今回の調査で分かったこと
まずは結論から。
1.餅詰まりによる救急搬送は年々減少傾向にあり、H18-H21では70歳代が一番多く救急搬送されたが、H22-27では80歳代が一番多くなり、餅好きの80歳代がいるご家庭は引き続き注意が必要な状態にある。
2. 住民基本台帳を元に算出した東京都民で餅などによる救急搬送をされた人は、
H18-21年は11万6千人に1人。H23-27年は11万7千人に1人。
3.高齢者が餅を食べる際の予防策 3点
① 冬の寒い朝の一口目は十分注意が必要!
② 餅を小さくするだけでなく、さらに口の中でよく噛んで食べること!
③ 口の中の分が吞み込めてから、次の一口を!
調査方法
東京消防庁が公開している“餅などによる年別の救急搬送数“を使い、1年あたりの平均搬送数を算出しました。2009年(H22年)の報道発表資料では4年間の合計(H18年-H21年)の総数が442件(注1)1年あたり平均110.5 件となります。2016年12月の報道発表資料には過去5年間(H22年-H27年)の救急搬送数合計が記載されており、総数は562件。つまり1年あたり平均112.4件。(注2)
注1: 年代別搬送数を合計。元データでは合計N=444となっていますが、年代別の数値を合計すると合計424件になるので、2件が漏れていると思われる。
注2: H22のデータは報道資料から見つけられませんでした。
東京消防庁の年別時系列データでは、H22-27では年々救急搬送数は減少傾向にあるため、これ自体は朗報。
引用元:http://www.tfd.metro.tokyo.jp/camp/2016/201612/camp1.html#004
今回の調査ではH18-H21の4年間の1年あたり平均と、H23-H27の5年間の1年あたり平均を比べています。そのため前述の年別救急搬送数と平均値では数が異なる点をご留意ください。
次にどの年代で事故が多いかをパレート図で可視化してみます。
ここで分かることは、H18-H21の1年あたり平均では70歳代が一番多く搬送されていましたが、H22-H27では80歳代が一番多く搬送されています。具体的には80歳代の数字が39.5件➡43.6件へと伸び、70歳代の搬送数は39.5件➡30.2件に大きく減ったため、結果として80歳代が一位になりました。これは高齢化の進展によるものなのか、70歳代の餅消費が減ったためか、原因は不明です。
都民が餅などで救急搬送される可能性
次に都民が餅などによる救急搬送される可能性を試算してみました。
引用元
ここから各年12月のデータを使ってH18からH27年の総人口と世帯数を表にします。
本テーマと関係ありませんが、他の都道府県は人口減少が進んでいますが、この表をみると東京は人口が年々増えているのが実感できますね。
ざっと試算すると、
- H18-H21の救急搬送数 年平均110.5件 ÷ 都民人口総数平均 1,286万人 = 0.0009%
- H23-H27の救急搬送数 年平均 112.4件 ÷ 都民人口総数平均 1,323万人=0.0008%
となります。
言い換えると餅などによる救急搬送される人は
- H18-H21では 都民11万6千人に1人
- H23-H27では 都民11万7千人に1人
となります。
注:都民人口総数平均はH18-21、H23-27それぞれの期間の平均値を採用
そもそもの1年あたりの餅などによる救急搬送件数が都民に対して非常に少ないため、当事者になる可能性は低いのですが、先ほどのパレート図で分かる通り、救急搬送されたのは70-90歳代が全体の約9割を占めるので、当たり前ですが高齢者のいるご家庭は特に注意です。
因みに厚生労働省の出している死亡原因の年次別順位もみましたが、餅のカテゴリーは残念ながらありませんでした。
統計局ホームページ/統計FAQ 21C-Q04 死亡原因の年次別順位
餅の購入数は都道府県によって微増もあれば微減もある
今回餅の購買数と救急搬送数の関連も調べようとしましたが、年別データがなく今回の簡易分析では調査を断念しました。
全国餅工業協同組合のHPには、一世帯当たりの餅購入数のH18とH27の比較が掲載されています。他にもお餅に関する様々な情報が掲載されているので、興味のある方はどうぞ。
引用元:
おもちの時間【しらべる】|お餅大解剖|100%お餅ミュージアム|全国餅工業協同組合
お餅メーカーさんも努力している
全国餅工業全国餅工業共同組合のHPには各メーカーのHPへのリンクが貼られているんですが、メーカーさんもスリット入りや小型のお餅を出すなど色々と努力されているので、誰でも美味しいお餅をもっと食べてくれると良いなあと思いました。
高齢者がお餅を詰まらせないようにするには
ここまで来て、じゃ対策するにどうすりゃいいのさ、と思い調べたところ、消費者庁がH25 12月に出した広報がありました。餅好きの高齢者や家人がいるご家庭はサバイバル術の一つとして覚えておきましょう。餅は予防が大切。
引用元:http://www.caa.go.jp/safety/pdf/131218kouhyou_1.pdf
でもやっぱり詰まらせちゃたよ、という場合の応急処置(背部叩打法)は、東京消防庁のHPに丁寧に案内されています。こちらも家人が詰まらせる前に是非読んでおきたいものです。餅には餅にあった対応が重要。
調査を終えて
今回公開されているデータを使って調査・分析してみましたが、より詳細なデータがあると更に面白い傾向を知ることが出来るかもしれません。とはいえ、大まかな傾向と対策までは知ることが出来たので、これが皆さまのお役に立つと何よりです。最後に餅、餅と書いてきましたが、今回の救急搬送数の内訳には餅以外に団子も含まれているので、団子を食べる高齢者や家人をお持ちのご家庭は、団子への警戒も怠らないよう、くれぐれもよろしくお願いします。
引用したデータ
東京消防庁 2016年12月 年末年始の救急事故をなくそう
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/camp/2016/201612/camp1.html#004
東京消防庁 H22年の報道発表資料
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-kouhouka/pdf/221227a.pdf
東京都の人口統計データ
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/juukim/jm-index.htm
全国餅工業協同組合 都道府県別 世帯当たり餅購入数
http://www.omochi100.jp/jikan/shiraberu.html
消費者庁 H25年12月 報道資料
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/131218kouhyou_1.pdf
免責;本調査結果は個人的な遊びで行ったものであり、公的機関の公式な見解ではありません。